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2016年03月28日08:02

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1124

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1124          

葉室麟 「鬼神の如く(黒田叛臣伝)」            

この作家は僕と同世代なので、もういい歳なのだが、
実に精力的に書き続けている。直木賞を受賞したのが
もう5年くらい前だったと思うが、その前後から今日まで
だいたい年に5〜6冊も上梓している。シリーズの
文庫本でこのペースで出している作家は佐伯泰英など
少なからずいるが、一作ごとに登場人物も場所も異なる
単行本で出すのは大変だと思う。

葉室氏の歴史時代小説では、名もなき下級武士が
登場することが多く、戦国武将など著名な人物はあまり
登場しない。だが、本作は例外である。「黒田騒動」は
江戸時代における史実である。なので、ほとんどの
登場人物は実在の人だ。

この騒動は、黒田藩の主君に対して家老の栗山大膳が
起こした謀反とされている事件なのだが、この騒ぎに
対する将軍家の裁定は、藩の改易はなく、また栗山の
処分も軽いものであった。よく分からない事件なのだが、
その分からない空白部分を著者は巧く埋めて、面白い
小説に仕立て上げた。

三代家光は、関ヶ原で貢献のあった大名をも含め
各藩の弱体化、取り壊しをもくろむ。また、幕府の秩序の
ためキリシタン禁止、さらにルソン進出ももくろんでいる。
家光の命を受けて竹中采女正が栗田に探りを入れるべく、
2人の間者、卓馬と舞の兄妹を栗田家へ送る。だが、
2人は栗田に信奉し栗田の家来となる。竹中らの幕府側と
栗田との知恵比べが展開する。

また、幕府側の柳生親子や宮本武蔵、さらには天草
四郎も登場する。彼らは単なる色づけではなく、関ヶ原
から数十年の江戸幕府の様子を立体的に表す存在とも
なっている。

藩主の黒田忠之にことごとく逆らうカ老の大膳だが、
彼はいったい何をもくろんでいるのか? 黒田藩を
壊したいのか? 周りの九州の各藩もお家断絶の
危機があり、藩主も半信半疑だ・・・。

なぜ黒田藩は取り壊されずに済んだのか、そして
栗田大膳は切腹とならず生き残ったのか? その
謎が著者のフィクションによって解き明かされる。


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