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2016年03月20日12:26

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1122

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1122            

島薗進 & 中島岳志 「愛国と信仰の構造 
〜全体主義はよみがえるのか」          

宗教学の大御所である島薗先生と気鋭の若手
政治学者(「報道ステーション」のコメンテーターと
しておなじみの)中島先生との共著。対談形式に
なっていて、専門用語を抑え気味にしているので、
比較的素人に読みやすくなっている。

タイトルが示す通り、宗教がどうして「愛国心」に
つながり、それが全体主義へと発展し、敗戦へと
突き進んでしまったのか、について語り合っている。
と同時に、2人は現在をも語っている。というのは、
明治維新から約150年経過し、敗戦までの75年と
戦後の75年に区分分けし、最初の75年を分析して
ゆくと後の75年と酷似していることが分かるという
のだ。結論から言うと、今は危険な時期と言える。

明治維新は革命ではなく王政復古であり、天皇を
頂点とした国家を新政府は創っていったわけだが、
一般国民を動員させるべく国民の精神の統一を
はかった。それが「国家神道」という、あらゆる
宗教の上に置かれる超宗教を人工的につくって
国民を一つのベクトルに向わせた。

このあたりは、既に多くの歴史学者が唱え、かつ
検証されていることである。本書で僕が新鮮に
感じた点は、明治から昭和にかけての右翼の
精神バックグラウンドの分析である。彼らの
20歳前後は(他の一般の青年も同じだと思うが)
自分がどう生きるべきかに悩む。そして宗教に
アクセスする。本書では親鸞主義と日蓮主義を
取り上げている。前者は他力本願なので自ら
動かない、ありのままを重視するのに対し、後者は
社会変革のために積極的に動くという違いが
ある。いずれにせよスピリチュアルな生き方を求める
中で自己と国家との同一同化を理想と考える。

2人の著者は、過去の日本の近代化の暗黒部分を
分析しつつ、現代の日本に対して警鐘する。島薗氏は
既に全体主義の道に入っていると言う。

今日の日本の宗教は全体主義を応援・発展させる
存在なのか? それぞれの宗教ごとに対応が
異なっており、一概には言えない。だが、間違いなく
言えることは、神社本庁と関わっている「日本会議」は
「日本会議国会議員懇談会」により応援されていて、
この懇談会には安倍首相をはじめ安倍内閣の閣僚が
多く参加している。実際、自民党の憲法改正草案にも
天皇を元首とする内容となっている。

ただ、今の日本の「ねとうよ」(ネット右翼)が、国家
神道への傾斜があるのかと問われれば、僕はそこは
今のところないと思う。また天皇崇拝も古典的右翼の
集団にはあるが、果たして「ねとうよ」にあるのか?

まだ本書で解明されていないこともあるのだが、
宗教とナショナリズムを考える上で大変参考になった。

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