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2015年12月28日10:25

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若尾文子映画祭

 今年の劇場映画鑑賞の締めくくりとして、「若尾文子映画祭 青春」で上映中の「東京おにぎり娘」と「最高殊勲夫人」を観てきました。


 「東京おにぎり娘」はタイトルからして健気なヒロインの明るく楽しい細腕繁盛記なのかな、と思っていたのですが、意外にもやや重ための人情劇だったので、ちょっとがっかり。「大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン」の田中重雄が監督だから、しょうがないか。
 でも、昭和30年代半ばの新橋駅付近の風情がたっぷり見られる上、ジェリー藤尾の「粗野だけど純情な男のナイトぶり」がなかなかよかったので、及第でしたね。


 「最高殊勲夫人」ですが、いやー、これは最高!
 はっきり言いますが、ことスリラーとラブコメに関する限り、昭和20〜30年代の日本映画は今の作品なんかより遥かにレベルが上ですね。最近流行の、高校生男女の愚にもつかないホレたハレた劇なんか観てる暇があったら、こういう戦後日本映画のスピーディでオシャレな映画を観た方がいいと思いますよ、若い衆。

 岡本喜八の「結婚のすべて」「若い娘たち」もそうだったんですが、やたらと向こうっ気が強くて自己主張の激しいヒロインが登場すると、この種の映画って俄然面白くなりますね。
 本作では「アタシは姉さんたちみたいな結婚はぜったいしないモン!」と意地を張っているヒロインが次第に姉たちの勧める青年(実は長姉、次姉の夫たちの弟)に惹かれはじめ、でも恋人がいるふりをして周囲をさんざんやきもきさせるという展開になってるんですが、見ようによってはとんでもないワガママ娘に思える彼女、若尾文子が演じるとイヤな女に見えないんですから、フシギです。

 製作当時(1959年)、まだまだ日本社会には理不尽で暗い因習の残されていた結婚(あ、今でもそうか)ですが、映画の中ではとてもドライに、そして自由に描かれていることに、軽い驚きを感じてしまいます。
 せめてフィクションの世界の中では、結婚というものをもっと明るく楽しく、希望あるものとして提示したいという、戦後日本映画の作り手たちの意気込みが、ここにはありますね。

 それにしても本作における若尾文子の、なんと溌剌としていることか!
 自宅の小さな庭で野球談義をしながら父親(宮口精二!)とキャッチボールをするシーンの素敵なことと言ったら。後年「卍」「瘋癲老人日記」で妖艶でねっとりとした色気を見せることになる彼女に、こんなボーイッシュな一面があったとは!
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