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2015年05月23日16:14

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NHK-BS「新BS日本のうた」でささきいさおと秋川雅史がフランク永井の歌を熱唱

 今春にリニューアルしたNHK-BS「新BS日本のうた」だが、5月中旬の放送でスペシャル・ステージにささきいさおと秋川雅史の二人が登場し、そこでフランク永井の特別コーナーが演じられた。
 ささきいさおは代表曲はいうまでもない「宇宙戦艦ヤマト」、秋川雅史は「千の風になって」である。ささきはアニメ・ソングの帝王であるばかりでなく、声優、俳優としても実に幅の広い人気のエンターテナー。
 そのささきは特に近年「あこがれ尊敬する歌手はフランク永井」と公言してはばからない。カバーの歌う機会があれば彼はかならずといっていいほどフランク永井を歌っている。彼のストレートな歌い方はフランク永井のカバーとしては秀逸だ。
 まさか秋川雅史と二人で歌うという組み合わせが見られるとは思わなかった。だが、聴いてみるとなかなかいい。秋川は「夜霧に消えたチャコ」を歌い「俺は淋しいんだ」を二人で歌っているのだが、渡久地政信のこの歌についてはオペラの歌唱をイメージさせるような歌い上げではなく、比較的すなおな歌唱であった。音程、滑舌ともによくたいへんすなおに聴けた。
 ささきは「おまえに」と持ち歌「雪の慕情」を聴かせてくれた。「おまえに」はさすがである。「おまえに」をしっとりと歌い嫌味なく歌えるのは、今は彼の独断場であろう。吉田正が作曲家生活50周年を迎えた1997年に、さまざまな特集がテレビでもくまれたのだが、そのときフランク永井は闘病に苦しんでいたので、当然テレビには出演できない。ささきいさおに「おまえに」を歌ってもらうのはどうか、ということになって、コロンビアのささきに吉田正は直接指導をした。ささきは最後の吉田門下生ということになる。
 さて「雪の慕情」について、彼は番組で語っている。「50周年の記念の曲を作ったが歌う人がいないので、その低音で歌ってくれと託された。吉田先生が最愛の妻について作られた曲、残された最愛の人を想う歌、先生の遺作」であると。特別な思いをこめて歌っているという。作詞は「おまえに」と同じ岩谷時子。
 この「雪の慕情」は「おまえに」とともに、ビクターから発売(2010:VICL-36582)されている。

 吉田正が低音のささきいさおに託したという「雪の慕情」。初めてこの曲を聴いたときに驚いた。「ははぁ、これは…」と。あれからすでに30年を経過して、そのときに生まれたとしても30歳、このような年月を経て、思い入れの深い曲を新たな装いで復活させたのだなと。その価値を有り余るほど持つこの曲に新たな魂を吹き込んで、ささいいさおで復活させてみたい、という強い思いで託したに違いないと。
 知る人ぞ知る、あれからというのは、1965年11月3日、現在はなくなっているのだが、新宿の厚生年金会館で開催されたフランク永井の第2回リサイタルのことである。リサイタルでは当時画期的ともいえるこころみがなされた。三波春夫や二葉百合子らが得意として切り開いた「長編歌謡浪曲」とも、「日本人の日本のミュージカル」とも並べられる「長編歌謡組曲」なるものをフランク永井が挑戦したのである。
 それがそのリサイタルで「慕情」というタイトルで披露された。およそ20分におよぶもので、フランク永井が東京混声合唱団によるコーラスを背景に、ろうろう、せつせつと歌ったのである。情感豊かに、あざやかに情景を歌い上げたフランク永井に喝采は惜しみなく終えることがなかった。フランク永井がただの流行歌手ではないことを誰もが思い知ったのだった。絶賛されて話題となり第20回芸術祭「大衆芸能奨励賞」を得ている。
 岩谷時子の歌詞を追うと、好きだった恋人がいただ結びつくことなく別れ何年か経つ。寒い雪が降る夜に、忘れ得ぬそのときの恋人がデパートで買い物をしている。おもちゃ売り場で人形をかっているのを見てしまう。声もかけられない。しんしんと雪だけが降り積もる…という男のせつない情景だ。
 この大作は第2回リサイタルのLPで発売された。その曲はシングル化されることが困難ということもあるが、10巻LP大全集に収められ、CDでは作曲家生活50周年記念の吉田正大全集に入った。2013年にMEG-CDでリサイタルLK2枚組が復刻発売(2013:MSCL-60224)されので楽しむことができる。
 そう、ささきいさおに託した「雪の慕情」はまさにこのフランク永井の「慕情」で、これを通常のシングル曲である3分版に組み直して、若干の歌詞の変更を加えて、オリジナルの新曲としたものなのだ。もちろん、そのような過去をもつ曲であったとしても、ささきのオリジナル曲としての輝きにかわりはない。むしろこのような形で装いを変えて歌われ続けることにこそ、大いなる意義と価値を感じるものである。

 1997 岩谷時子作詞、吉田正作曲 「雪の慕情」
  雪がふる 雪がふる 音もなく  しんしんしんと ふリつもる  君の白い 衿あしのように
  追いつめられた 旅路の闇に  恋の涙の 凍った雪が  しんとふる 雪がふる
  僕のこころに  しんしんしんと ふリつもる

  雪がふる 雪がふる 音もなく  しんしんしんと ふリつもる
  君のせつない ほほえみ映して  山の出湯の ガラスの窓は
  北の吹雪が描(か)く色様様  しんとふる
  雪がふる 吐きのように  しんしんしんと ふリつもる

  君の淋しい 後れ毛に誓う  つめたい道も灯(ともしび)だいて
  想い遂げよう 恋に生きよう  しんとふる 雪がふる 二人の夢に
  しんしんしんと ふリつもる

 1966 岩谷時子作詞、吉田正作曲 「慕情」
  今日もふる 雪がふる音もなく  しんしんしんと ふりつもる  意の白い衿あしのように
  君のつめたい額のように  恋の涙の凍った雪が  今日もふる 雪がふる
  僕のこころに しんしんしんとふりつもる

  君も覚えているだろう  初めて逢った日のことを  芝居のはねた あの夜も
  しんしんしんとふっていた  通る車も傘もなく  暗い曹ぞら見あげてた
  心細けな君だった

  黙って傘をさしかけた  僕を見あげるその頬が  うすくれないに染まるのを
  まぶしく見つめた僕だった  夜更けLでかな地下鉄へ  ほっそり消えた その肩が
  雪のしずくで濡れていた

  有難うと一と言  気をつけてと一と言  初めてかわした見それだけで
  惹かれてしまった心と心  恋と呼ぶには はかなくて  愛と呼ぶのは おそろしい
  だけど心の奥深く眠る泉を  かさたてるほっそり優しい女人(ひと)だった

  あの夜一僕は夢を見た  君をこの手に抱きしめて  その黒髪に 衿あしに
  白くふるえる 瞼の上に  あついくちづけした夢を  あついくちづけした事を

  とおい花火も きいたっけ  夏にひらいた この恋に  ほほえむ君の かわいさを
  知るのは僕と 星だけさ

  落葉の秋はさびしいと  くちつけかわした星の夜  空に近いホテルのスカイラウンジで
  旅をしようと云ったとき  あのチエプルの暗い灯かけに  こぼした涙のそのわけを
  どうして僕が知るだろう

  僕は忘れない 僕は忘れない  狂ったようなギターの音が  街にながれる 日曜日
  僕は見てしまった  あのデパートの 玩具売場で  人形を買っている君の姿を
  僕が愛したその指に  まつわりついてた可愛いい子  みつめる母のほほえみを

  なぜ なぜ  君は僕を愛した  僕は君を愛した  僕のなかから僕だけの
  君のおんなが生れたと  信じた僕が馬鹿なのか  この唇がふれるとき
  この手の中で こわれてしまう  ちいさな頬を 思えば今も  涙が涙が あふれてくる
  いまは帰らぬ恋なのに  こんなに君を愛しいと  どうして僕は思うのか…………

  さようならの一と言も  さようならの一と言も
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