安藤サクラと井浦新の共演と聞けばどうしても3年前のヤン・ヨンヒ監督「かぞくのくに」における兄妹タッグを思い出してしまう。そして「かぞくのくに」同様、この作品も安藤サクラの寝顔アップという確信犯的な仕掛けで幕が開ける。ところがよしもとばなな原作のこの作品は、社会的な題材をとらえた「かぞくのくに」とは対極に位置する、ごくごく個人的な物語に終始した。
原作を読んでないから勝手なことを言わせてもらえば、ひとつひとつのセリフのやりとりや安藤サクラ演じる寺子がときおりつぶやくモノローグは、おそらく原作の文章一字一句を忠実に再現しているのではと思わせる。各登場人物芝居がヘタというわけではけっしてないけれど、誰もみな文章を読んでいるような感触がこちらに伝わってきてしかたがない。
フォトグラファー出身の若木信吾監督なのでアングルや光線に意識的なのはよくわかるけど、肝心の物語にたいしたことが何もおきないまま91分が終わってしまうから、こちらの想像力をすべて動員しないととても退屈な作品となる。ひょっとしてここからここまでの部分は寺子の夢の中なのではとか、この登場人物は実際には存在せず寺子の別人格なのではとか…。
安藤サクラがお得意とする生々しいまでのリアルな女性像を楽しむには興味深い作品かもしれないけど、観る側に委ねる部分が多すぎかつ忍耐力を必要とするのはちょっとツラい。いつもながらこういう邦画作品はリリカルとか透明感とかの一言で片づけられてしまうのだろう。劇場内からイビキが聴こえてきたのには、作品タイトルを体現化したかと思わず苦笑してしまった。
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