たしかにビンボーくさい作品です。でも“おカネがなくても、アタマさえ使えばこんな面白い映画ができる”という典型的なお手本。昨年「鍵泥棒のメソッド」で脚本関係の賞を総なめにした内田けんじ監督2005年のメジャーデビュー作。ロードショー時に観た私はこの面白さを何人にふれ回ったことか。今回ふたたび劇場で観て、あらためてその巧みな造りに酔いしれました。
最初のうちはショボイ男女のショボイ恋愛ものかなと思わせるのです。ところがある地点から話の組み立てがぐっと立体的になり、あとはスクリーンから目が離せません。たった一夜の出来事だけど、時間の経過とカメラアングルとセリフのやりとりを巧みにスライドさせ、観ているこちら側のパズルを解くような好奇心はぐんぐんと加速していくのです。
出演陣も“有名じゃない人”がほとんど。せいぜい山下規介とメジャーになる前の板谷由夏。ロケ地は小さな町一つあればじゅうぶんという完全なる低予算映画。だからこそ映画製作にはげむ全国の高校・大学映画研究部員に観てほしいのです。クルマがキーアイテムのひとつなので、高校生にはムリか。でもそこのところこそアタマを使いなさい。
コミックや小説の映画化、人気TVドラマの劇場版であふれる邦画の世界。だからこそ内田けんじ監督は自身の手によるオリジナル脚本にこだわるのです。練りに練って完成させるので4年に1本ぐらいのペースしかムリだとか。大きなスクリーンで観る必要はないので、ぜひレンタルDVDで。TSUTAYAの大型店でさえ、陳列棚の片隅に埋もれているかもしれませんが。
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