25年前、帰国事業により16歳で北朝鮮に渡った兄が病気治療のため3ヶ月だけ許しを得て祖国に戻ってくる。しかしそこには終始監視員が張りついており、団らんを迎えるはずの家族がギクシャクする。兄はほとんど感情を表にせず、旧友たちとの同窓会でもいっこうにハジけない。映画「かぞくのくに」、終始セピア色のスクリーンで展開する実に重たい作品だった。
映画は主演・安藤サクラのアップで始まりアップで終わる。彼女は基本ノッペリとした無表情な顔立ちだ。ただこの作品の中ではヘンな表現だけど“多彩な無表情”を見せてくれる。ある一場面をのぞいて終始感情を抑えていた兄役(井浦新−あのARATAだとは最後まで気がつかなかった)とは対照的に、やり場のないいらだちや怒り、悲しみを表現するのがとても上手い。
ひとつひとつ引用しないけど、「あの国」を表現する重いセリフがいくつも出てくる。それは言いたいことの言えない兄の口からだけでなく、同胞協会で働く父や喫茶店を営む母、そして監視員に至るまですべてのキャストが「あの国」のことをそれなりの立場で重い言葉にしていく。実体験を持つヤン・ヨンヒ監督だからこそ表現できたセリフの数々だと思う。
しかし北朝鮮への帰国事業が80年代初頭まで続いていたとは。無知をさらすようだけど、もっと過去の出来事だと思っていた。あのころKDDでオペレーターをしていたおかげで(大阪発通話の3分の1が韓国宛)普通の学生よりは半島情勢に興味があったはずだけど(大島渚・玄界灘でのバカヤロー発言、覚えてますか?)。知らない歴史や現実がまだまだあるということです。
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