「有楽町で逢いましょう」は1957(S32)年のフランク永井のヒット曲。この歌は戦後の歌謡曲の世界に大きなインパクトを投げかけた。
戦後復興をめざす大都市東京。有楽町はその中心でありながらもまだまだ荒廃していた。デパートそごうが都心て開店するというテーマを最大限に復興に利用するために、テレビ番組、月刊誌での連載小説、映画、そして歌謡曲と舞台公演など大きな連携を実現したこと。それに名も知れない新人歌手を起用したこと。「魅惑の低音」と銘したフランク永井の低音ブームを呼び起こしたこと。
そして実際に1964(S39)の東京オリンピック開催にめがけて、都市の形が実現した。高層ビル、高速道路ができて、きれいな街、安心してショッピングできる街、若者の好楽街が急激にできていった。その建設には全国から「出稼ぎ」があつまり、地方の若者が集団就職で集まってきた。
膨れ上がる都心の人々。決して裕福ではなかったが、夢と希望に満ち、活気にあふれる時代であった。都会で働く人びとにさまざまな憩いの場所がつくられた。流行歌は癒しとしてたいへんな人気をはくした。三橋美智也や春日八郎が歌うふるさとを想い起させる望郷演歌は絶賛され、三橋のレコードは1億枚を超えたというからすごい。
三橋は民謡で鍛えられた美声で独特の味をもっていた。春日は独自の鋼のような歌唱が他をよせつけないものがあった。彼らの高音は当時最大のメディアであったラジオの電波にマッチしていて、歌は高音でなければという流れがあった。
そこにフランク永井の低音風の語りかけるような、それでいて忘れられない包み込む歌唱は新鮮であった。今でも彼らが持つユニークな歌唱が人気を保持している。
「有楽町で逢いましょう」(佐伯孝夫作詞、吉田正作曲、佐野鋤編曲)は、その後の歌謡界にインスパイアを誘導して、多くの歌手がカバーをしてきた。「有楽町で逢いましょう」という曲名自身がフランク永井という最初に歌った歌手の名とともに、多くの人の記憶に残された。
鶴岡雅義と東京ロマンチカも戦後歌謡曲の歴史に燦然と記録される。「小樽のひとよ」「君はこころの妻だから」などを世に出したムード歌謡を歌う男性コーラス・グループ。甘いボーカルは三条正人や浜名ヒロシ。鶴岡雅義のつまびくレキントギターがいい。
メインボーカルの三条。筆者の子供のころの友に彼に似た顔立ち、声の人がいた。野球でも活躍していたのだが、ガキのときから気性の合わないヤツだった。後に詐欺の事件を起こすなどした。そのようなことと三条は無関係なのだが、歌を聴くたびにヤな印象とともに想い起す。
数かずの印象深い名曲を残す鶴岡雅義と東京ロマンチカが、2004年に発売したのが「有楽町でまた逢いましょう」(シングルCD)だ。「また」がつくまぎらわしい歌詞を書いたのは、フランク永井と無縁ではない放送作家の高田文夫。作曲は1978年にフランク永井に詞曲を提供(「グラスの氷」「ひかげうた」)している中村泰士で、鶴岡ではない。このCDのB面(CDにB面はないので2トラックなのだが)は鶴岡作曲の「母に贈るワルツ」。
「有楽町でまた逢いましょう」は詞、曲ともに「有楽町で逢いましょう」をレスペクトを持ち強く意識して作られたことが聴けばわかる作品となっている。だが、同時におふざけなのか、遊び心なのか、高田文夫自身が歌うバージョンが入っていたりするし、いずれのバージョンもカラオケ(演奏だけ)も入っているというCDだ。
さて、タイトルに「有楽町で…」を冠するというと、現在も着実な歩みをすすめているのが、ニッポン放送系での「演歌・歌謡曲ライブ〜中山秀征の有楽町で逢いまSHOW♪」。毎週日曜日朝5:30〜6:00ラジオ・ニッポン放送、テレビでは毎週水曜日の夕刻歌謡ポップスチャンネルで放送している。テレビは有料チャンネルゆえか見る機会は残念ながらいままでない。
歌謡ポップスチャンネル+ニッポン放送+日本音楽事業者協会によるもので、中堅から新人歌手までゲストを招いてのショーのようである。
2002年には「aiko〜有楽町で逢いましょう〜Love Like Pop vol.VI〜」という作品が発売されている。若い女性の歌手の進出と活躍は近年すごいものがありますが、aikoはそのひとり。筆者らの年代では知らないという人のほうが多いかもしれない。
これでは別に「有楽町で逢いましょう」をカバーしているわけではない。単にこの年に各地での公演ツアーを有楽町の国際フォーラム会場で締めくくろうと企画したライブ。そのときのキャッチに「有楽町で…」を使ったものだ。そのライブだけでの曲とか、そのライブDVDにだけ入っている曲とか、彼女のファンにはそれなりに貴重な作品になっている。
もちろん他にも無数に「有楽町で…」にひっかけた企画や作品があるのだろう。フランク永井が歌って切り開いた世界が、さまざまな形で現在に受け継がれ、未来に渡されていく。こうしたこともファンにはありがたいことである。
右の写真は、左上からSP盤発売時のエンベロープ、右はEP盤とSP盤の歌詞票、左下はSP盤レーベル、MEG-CDから復刻CD時のレーベル、右下はEP盤のジャケット。
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