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2026年03月16日10:18

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フランク永井は「共鳴のコントロール」と「息の混ぜ方」が極めて秀逸

 昨年秋からNHK Eテレで「ビストロボイス」を放送しています。司会は声優山寺宏一です。彼は現在では最も著名な声優です。「七色の声」をあやつるという異様な技能をもつ声のプロです。彼が声のコントロールということで気になるお仲間、声優、俳優、ナレーター、歌手等々の分野からゲストに招いて、彼らの世界ならではの深い談義をする番組です。
 フランク永井は「魅惑の低音」という冠を抱いているようにやはり声の達人です。フランク永井が舞台から降りると、彼のような「歌手」の後継はいないのか、とプロたちは探しました。しかし、見つからなかったのですが、それほど彼の魅惑の低音は卓越したものだったのです。
 ではそれは、いったい何なのか、どういうことなのか、ということについては、その後もずっと探し続けてきました。そのような観点から見ると、番組「ビストロボイス」での話は大変興味深いものがあります。解説で登場する長塚全ボイストレーナーの説明がまた面白いのです。
 アナウンサーは発声について訓練を受けます。そのときにのどと声についての倫理的な学習もします。フランク永井のファンでも有名な元NHKアナの宮本隆治は、歌コンの司会をしたときに、実際に田中角栄、志村けんなどの声色を行いながら解説までして、聴衆を喜ばせました。
 番組にでる方たちは、山寺も含めて結果的に声楽を理論的に理解し、実際に使って見せているわけです。青木隆治が女性の美空ひばりの歌をコピーで見せるように、山寺たちは声の高低、音質を自由に、しかも滑らかに出して見せます。一つの芸術ですね。
 フランク永井もかつて労音の公演で洋楽のクロスビーなどの声色をやってみせました。
 唯一無二のフランク永井の発声を一言で表現すれば、「天性の骨格」というハードウェアを、「緻密な呼気制御」というソフトウェアで鳴らしきった最高級の楽器です。ジャズから歌謡曲まで歌いこなせたのは、この基礎発声が完璧だったからです。
 「おまえに」は岩谷時子作詞吉田正作曲作品で、フランク永井の「有楽町で逢いましょう」「君恋し」とならぶ代表曲です。このいわば「どこにでもある夫婦や男女の情愛」を彼が歌うと、そこに「人生の厚み」と「揺るぎない包容力」が宿ります。残念ながら、多くの歌手がカバーしていますが、歌の奥行き、愛情の深さ表現はフランク永井の表現には誰もかないません。
 このあたりについて、以前にAIに訪ねてみたことがあります。
 興味のある方はご自分で訪ねてみたらと思いますが、概略ですが次のような回答がありました。
  1. 「低音の倍音」がもたらす安心感
  2. 「語り」と「歌」の境界線を消すテクニック
  3. 「引き算」の美学
 これだけでは、意味がよく分かりません。少しだけ説明すると、多くの歌手は「聴かせよう」として力んでしまいますが、彼は喉の力を極限まで抜き、まるで隣で晩酌をしながら話しかけているような、驚異的な「脱力」を実現しています。この「頑張っていない凄み」が、ありふれた歌詞を「真実の言葉」に変えている、ということ。ボイストレーニングでは「もっと響かせて」「もっと感情を込めて」と教えがちなところを、彼はその逆、つまり「引き算」で極致を表現しているということです。
 恐ろしいですね。フランク永井の顔にある骨格から発生可能な音。それを読み取って恩師吉田正は音声指導をする。フランク永井は、聴くものの耳を信じて的確な技巧を披露する。あの声にはそのような裏があったとは。
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