10月6日のBS朝日「日本の名曲〜人生、歌がある」番組で「フランク永井 低音ムード歌謡の世界」が放映された。
この番組は「日本の名曲を知り尽くした司会者・五木ひろしが思う日本の名曲をご紹介するコーナー。オリジナル歌手が歌唱する楽曲はもちろんのこと、各回の出演歌手がカバーも披露。幅広い世代から支持される楽曲、選りすぐりの名曲をお届け」するという、歌謡曲ファンに知られている番組だ。
そして定期的に、歌謡界に大きな貢献をした歌手にたいして、敬意と感謝をもって名曲を歌い継いでいこうというトリビュートコーナーを持っているのだが、今回はフランク永井が取り上げられた。この十月はフランク永井の永眠の月であり、生誕地の宮城県大崎市松山では「フランク永井歌コンクール」が開かれる月だ。現地では準備もほぼ完了状態で、全国からの訪問を待ちかねている。
司会は五木でサブ司会がこの日は八代亜紀。
「フランク永井 低音ムード歌謡の世界」と題し「昭和歌謡史に燦然と輝くフランク永井さんを特集。あの低音の魅力と往年の吉田メロディーの数々、そして高度経済成長期と共にあったフランク永井さんのムード歌謡の魅力をたっぷりとお届け」すると紹介している。
フランク永井本人の歌唱はないのだが、どの歌手が何の曲を歌うのかという期待で鑑賞した。
お酒をちびりちびりとやりながらなので、つい過激な批評もとびだしてくるのだが、それでもたっぷりと聞かせていただいた。
まず、「君恋し」を八代亜紀が歌う。
八代節のジャズといった感じ。声の伸びが欲しい。「君恋し」は後に歌う秋元順子がよかった。秋元の「君恋し」は絶品だと思う。
「有楽町で逢いましょう」を千昌夫が歌う。千節なのだが、千にしてはめずらしく、慎重にまじめに歌っていた。力みがもう少しそがれないとこの歌の味がでない。
「ラブ・レター」をクミコと秋元順子の二人で歌った。二人はそれぞれ味のある歌を歌うのだが、どうもその色が出ずじまいの感があった。この曲はそうとうに歌いこんで内容に入れ込まないと難しいのかもしれない。
「東京午前三時」を伍代夏子。真っ赤なドレスで演出。伍代節としてこなされ花を添えた。佐伯孝夫の詞は戦後の眠らぬ東京の夜の感じをよく出しているのだが、今の歌手が歌うとやはり現代の夜の東京のイメージになってしまうのはやむを得ないのだろう。
「東京ナイト・クラブ」はチェリッシュによるデュエット。チェリッシュの路線とはやはり色合いが違いすぎたかもしれない。歌う表情に苦悩が残る。良くも悪くもアクの強さ、耳にしつこくまとわりつく松尾和子の歌唱と比べてしまう。
「おまえに」を山川豊。過去にも山川はこの曲を歌っていたように思う。山川はいい低音の音程を歌える点がいいのだが、やや高音の鼻にかかる個所があって、曲全体としての受け取り方に引けるところがあるのが惜しい。
最後に「霧子タンゴ」を五木ひろしが歌った。これも過去に聴いた気がする。五木は若いときに「歌マネ番組」などによく出ていて、フランク永井の歌をよく歌っている。そのときには五木節ではなくマネとし完成していたのだが、五木節での歌唱はファンの評価が分かれるところだろう。
五木の歌自身はそれとして完成しているのだが、フランク永井の歌を聴きなれていると、五木節での「歌い上げ」が気になるのだ。だが、当日の演目の中ではもっともよかったであろう。
他の歌手の歌った名曲を歌うというのは相当難しい。まして、歌う歌手自身が「〜節」と言われるような個性とクセ、独特の味を持っている。それを持ちつつどうさばくのか、というのはいつも期待して聴くのだが、なかなか聴かせるまでに到達するのは難しいことだ。
先に歌っている歌手への敬意をそこなわず、原曲の詞とメロディーに込められた味を引き出すのは、それだけ容易なことではないということであろう。
昨年に発売されたフランク永井の「ザ・カバーズ」の好評をうけて、今月に「ザ・カバーズ 魅惑の低音再び」が発売される。フランク永井が先人たちが残したヒット曲をカバーしている。フランク永井には「フランク節」というのは、ありそうでなかったと思う。
どんなジャンルの歌でも自分の歌としてこなして歌っている。聴けば聴くほどそのたびに、大変な歌手だったということを知らされる。
今回の番組で、それぞれの歌手が歌い始めあるいは最後に、横に立てかけているフランク永井の遺影にきっちりかしこまってお辞儀をして敬意を表している。その気持ちが伝わる。
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