生後15か月の娘を冬の海岸に置き去りにし、殺人罪に問われたセネガルからの移民2世、大学で学ぶロランス。そして被告席に立つ彼女を傍聴席から見守るのは若手作家のラマ。ふたりの女性を通して母なるものとは何かを探っていくヒューマンドラマ。監督はこれまでドキュメンタリーを中心に撮ってきたアリス・ディオップ。
いわゆる法廷物。実際の裁判記録をそのままセリフに採用したというのがこの作品の特徴、必然的に法廷場面にはかなりの比重、発言者を正面からとらえたアングルの切り返しが続くだけでなく、真実を追及する言葉のやりとりが謎解きよりも抽象的な方向ばかりに傾きがち、観る側にはある程度の忍耐力と想像力が必要とされる。
裁判を重ねるうち、証言者のなかからは白人優位的な差別発言もいくつか。法廷を離れてロランスの母親と時間をともにしたラマは、同じアフリカにルーツを持つ移民女性として、ロランスを思うせつない感情が徐々に高まっていく。自身の現在の境遇とも重ね合わせ、その感情が極限に達するまでの彼女の心の動きが最大の味わいどころ。
効果音なのかBGMなのかあいまいなまま、意外かつ奇妙と思えるある旋律の重ね具合もふくめて音響効果がとてもユニーク。終始つきまとう重苦しさからは逃れられないものの、裁判の行方すなわち事実の解明よりも、ラマとロランスを中心にした何組かの“母娘関係”、それぞれのありかたを問いかけるシリアスな秀作でした。
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