舞台はソウルの近郊都市・河南(ハナム)。作家のジェニが女優ギルスと偶然出会ったのは、後輩女性が経営する書店&カフェをひさびさに訪れたとき。ジェニは創作活動から遠ざかり、ギルスは女優としての第一線から退いている。うまくいかない現状を抱えたふたり、ジェニはギルスを主役に短編映画を撮りたいとオファーする…。
ほぼ全編モノクロ画面、しかもあまりクリアな画質にあらず。これぞ監督ホン・サンス流と言ってしまえばそれまでだが、カメラはほぼ固定したまま向き合ったふたりないしはそれ以上の人物同士の会話を淡々と映していくだけ。観る側はえんえんと続く会話の内容から想像力をかなり動員するしかなく、忍耐力勝負がそこには待っている。
当初のうちはジェニ(イ・へヨン〜”意地の悪そうな作家”から中野翠を想起)が思いのまま発する言葉に見え隠れするトゲを探し出し、そこから生じる起伏を味わっていくのかと予想していたが、思ったほどそのトゲは鋭くならず。ギルス(キム・ミニ)を際立たせる映像表現もふくめ、結末にはそれなりの展開が待っているけれど。
まあ観るひとのほとんどはホン・サンス作品に向き合うという時点で、ある種の覚悟を持ってスクリーンに対峙しているはず。ただ過去作にくらべてより彼の色が強く出ているような。ここは連なる言葉のやりとりに刺激を感じえなかったこちらの力量不足かと。全編92分という短尺にもいっぱいいっぱいというのが正直な印象でした。
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