くる日もくる日もほぼ斬られ役、エキストラ俳優の宮松(香川照之)は、生活のためにロープウェイの管理業務にも就いている。あるアクシデントのせいで過去の記憶をすっかり失くしたままの彼は、変化のない日々を淡々と続けていたが、ある人物との再会で風穴があく…。佐藤雅彦・関友太郎・平瀬謙太朗、3名共同の監督・脚本・編集。
撮影中の劇のなかでさまざまな端役を演じる宮松、そして地味に実生活を続ける素の宮松、作り手はこのふたつの境目を、ときおり曖昧にしつつも何度も往復させる。宮松の過去がおぼろげに見えてくるにしたがい、今度は記憶を失くす前の彼と現在の彼のあいだを往復、この二重の行ったり来たり構造が物語を深いものにしている。
“顔芸”などと言われる香川照之だが、今回は感情を抑圧させてほとんど無表情のまま。そしていわゆる行間、次のセリフを待たされ沈黙が続くカットもけっこう多く、いつ急に爆発するかわからないという不気味な感じを常に漂わせている。そう、無表情こそが最高の演技、やはりこのあたりは超一流の俳優だと思いました。
サムライ映画の撮影場面が多いから、というのは先入観に他ならないけど、この行間をやたら読ませるという東アジア映画特有のタッチが、欧州の映画祭で評価されたのはなんとなくわかる気がする。いちおう納得できる謎解きは待っているけれど、この揺るぎない着地ぶりもまた、いかにも東洋的な結論ではないかと思った次第です。
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