信州の山村でひとり自給自足の生活を続ける作家のツトム(沢田研二)。数少ない俗世間とのつながりは、日々の様子を綴ったエッセイ原稿を受け取るため、時をおいてやって来る編集者〜恋人・真知子(松たか子)だ。水上勉の小説を映画化、監督は中江裕二。あえて担当者の名前を書かないけど、ときおり流れる音楽が意外にも効果的。
ツトムが採ったばかりのさまざまな食材がスクリーンに映える。これまでの食映画と違うのは、配膳された状態よりも、食材を水で洗ったり鍋に放り込んだり、調理の過程に重きを置いたところ。そして真知子はそれらの出来上がりを実に美味しそうにほおばる。街から来た彼女に感情移入していた観る側の多くはうらやましい気分になる。
中盤で冠婚葬祭が絡んでややテンポアップするが、ほとんどは静寂の日々。ツトム自身のナレーション(=エッセイ文面)がナビゲート、なにやらかっての「新日本紀行」の空気感。俗世間から乖離した禁欲的日々のなかに、いい頃合いで年下の美しい恋人がやって来る。この精進と煩悩の微妙なブレンドはなんだろうと思ったりする。
それはやっぱりジュリーだから、みたいな僻みっぽい方向に想像力は働く。そういえば何回か前のライブで「ことしはこれまでと違う仕事がある」みたいなMC。そのあとの「キネマの神様」交代劇さえなければ、もっとこの作品が彼の新境地とばかり脚光を浴びたかも。タイトル通り、美しい日本の四季おりおりは十分に堪能できます。
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