ノミネート部門数こそ「Mank/マンク」に譲ったものの、本年度オスカーにおける大本命作品。ひとつの地に定住することなくアメリカの大地をキャンピングカーのみで漂泊する、ノマドワーカーの日常を切り取ったロードムービー。すでに前哨戦というべき世界各地での映画賞に輝き、賞レースファイナルでの先頭ゴールインはほぼ確実。
リーマンショックのあおりを受け、長らくの住まいを失った60代女性ファーン(フランシス・マクドーマンド)は、季節労働者としてアメリカ各地を移動、車上生活者としての日々を重ねる。彼女からにじみ出る、人生を達観したかのような雰囲気がそうさせるのか、まるでドキュメンタリー作品を観るかのようなタッチが続いていく。
登場するほとんどのノマドワーカーが、役者ではなく実際の漂泊者だと知ったのは、作品を観終わったあとのこと。もちろん観ている間はまったく気づかず。そういえば河瀬直美監督も、昨年の「朝が来る」で主たる存在に一般人を起用したことを思い出した。同じアジア人女性監督の作品ということで連想が働いたのかもしれないけど。
このポスターが写し出す光景がすべてを物語っているような。夜明けあるいは夕暮れのほのかな光、一瞬の風、砂塵にまみれた空気、つねにざらついた感触…映像表現の素晴らしさを形容すべくいろいろ言葉を探すも、ほとんど月並みなフレーズしか出てこない。それだけ作品の持つパワーが並外れて圧倒的だったということです。
ログインしてコメントを確認・投稿する