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2020年06月20日16:10

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「ペイン・アンド・グローリー」〜幻想的回顧譚

身体の不調が続く映画監督サルバドールは、ほぼ引退同然の生活を強いられていた。折にふれて過去の自分を見つめること以外生きがいはなし。そんななか埋もれていた32年前の作品の再上映依頼が届く…。ペドロ・アルモドバル監督最新作。サルバドールを演じたアントニオ・バンデラスはこの作品でことしのオスカー主演男優賞にノミネート。

すべてが事実かどうかは別として、この物語はアルモドバル監督が自らの創作人生を振り返ったものだとすぐに気がつく。現在のサルバドールがあるブツに手を出すたびに、時間軸は大きく過去にうねり、才気に満ちた少年時代やバレンシアでの貧しいながらも母親(ペネロペ・クルス)の愛に満ちた生活、彼自身の初めての恋愛感情などが投影される。

興味深いのは作品全体を貫く色彩感覚。我々日本人ならまず落ち着かないだろうヴィヴィッドな色合いと構成美に満ちた現在のサルバドールの邸宅(「ここはまるで美術館」というセリフあり)、そして回想場面に登場する、母親をはじめとするバレンシアの女性たちがまとう鮮やかな日常着との色合い、このふたつが絶妙のコントラスト。

自身の過去作品再上映、かって諍いがあった男優との和解、その男優の一人芝居を通じて実現したかっての恋人との再会…サルバドールは徐々に精気を取り戻していく。大きなアップダウンがないぶん、階段をひとつずつ上るようにジワジワくる感動が待つ物語。ある仕掛けが施されたエンディングには思わずニヤッとしてしまいました。
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