パリで生活するさまざな母と子のすがたを、「母の日」を主軸にしてオムニバス形式で描く。ズバリの原題「La Fete Des Meres(母の日)」や英題「All About Mothers」が示すように、あきらかに母なるものを正面からとらえた物語にもかわらず、このおおざっぱな邦題にくわえて”働く女性の幸せと自分探し”方面にかたよった我が国の前宣伝はどうなのか。
乳飲み子をあやしながら職務に就く女性大統領、シングルマザーのジャーナリスト、認知症の母親を見つめる娘たち、街路にたたずむ謎の東洋人女性…。男性たちはあくまでも脇の存在、さまざまな母とその家族のすがたを早いテンポでつないでいく。数多くの人間関係をつぎつぎと目にすることになるので、全体を把握するまでちょっと時間がかかる。
なので観る側としては、あきらかに他の女性たちとは違った身分である大統領アンヌ(40代前半か、ジャンヌ・ダルクばりに美しい)の存在にまず惹かれる。多忙な彼女がケータイで職務に対処しつつ、我が子のオムツを取り換えるシーンはこの作品屈指の名場面、いや映画史上においてももっともリアルな“オムツ取り換えシーン”と言えるかもしれない。
多様化した現代においても、先進性あふれる社会保障制度が我が国にとってのよきお手本とされる国フランス。それでもその自由度がゆえにいろいろと問題を内包しているなとよくわかる作品。くわえてどこよりも自己主張の強いフランスの女性たち。はじめのうちはちょっとおっかないと思いつつも、だんだんと彼女たちがチャーミングに見えてくるから不思議なものです。
ログインしてコメントを確認・投稿する