モリッシーとジョニー・マーが初めて出会うシーンがある。モリッシーの部屋に招かれたマーはレコードラックを眺めながら「なかなかいいセンスしてるね」と言い、一枚のシングル盤を選んでターンテーブルに載せる。今度はマーのセンスが試される番、はたして彼が選んだ曲は…。こんなシーンが物語終盤にきっちりと用意されているからたまらない。
ザ・スミスのボーカリスト、モリッシーの物語。邦題にある通り、メジャーデビュー以前の彼に焦点を当てている。彼を演じるのは「ダンケルク」のパイロット役だったジャック・ロウデン。これが似ているかどうかと言うと、最近の音楽伝記映画の似てる似てない議論をあざ笑うかのようにまったく似ていない。せいぜい後半の髪型には努力賞を与えるとするか。
1976年のマンチェスターから物語は始まる。ロンドンで噴火したパンクの熱気が届くにはまだ少しタイムラグがあり、かと言って既存のロックは否定したい。音楽批評の端っこにいた当時のモリッシーは、このモヤモヤした気分を皮肉をこめた文章で発散させる。いや、当時のマンチェスターそのものがモヤモヤした空気で満ちていて、そのあたりの描写は実に巧い。
突き抜ける感覚がなく沈鬱なシーンも多いから、おそらく音楽に興味のないひとには、最初から最後までダメダメ男のグズグズ物語に映るかもしれない。当時の楽曲が数多く流れるも、有名どころはロキシーとスパークスぐらい、マニアック心は十分くすぐられるはず。このはじまりの物語、はたしてどのあたりまで描かれるのか、これは観てのお楽しみということです。
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