とりあえずは邦題がノーテンキ。貧しくも美しく生きる家族愛を期待すると裏切られる。たしかに貧しいし家族愛もないことはないけど…。1992年のロドニー・キング事件が題材、不当な判決によって生じたLA暴動に巻き込まれた、けっして豊かではない住民たちを追う。したがって原題はズバリ「Kings」。複数形になっている意味はいろいろと深読み可能。
実の親に見放された多くの子どもたちと暮らすシングルマザーのミリー(ハル・ベリー)と隣人オビー(ダニエル・クレイグ)を中心に、カメラはLAの貧しい住宅地のすさんだ日常を追っていく。それはまるで何人ものカメラクルーに、編集はあとからきちんとするからとりあえずこの荒廃をランダムに撮ってこいと指示した、ドキュメンタリー作品のような粗っぽい感触がある。
かといっていくつものドラマを重ねた、いわゆる群像劇までには到達しないから、観る側はなかなか着地点を見いだせず、ちょっとオロオロ気味になる。このあたりはことしの傑作のひとつ「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」にも通じる部分があるけど、ラストに向かっていく高揚感みたいなものにおいて、両者には大きな差がついてしまったような気がする。
フランスとベルギーの合作、監督は「裸足の季節」のトルコ出身フランスで活躍するデニズ・ガムゼ・エルギュヴェン。もちろん熱演だけど必要以上にオーラが出てしまったハリウッドスターふたりの起用がちょっとアダになったような印象あり。音楽担当がなんとニック・ケイヴ。エンドロールで軽妙に流れるソウル名曲、この女性シンガーってこんな声してたっけ。
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