まったくの別モン。これをポール・サイモン名義のものとして聴いていいものだろうか。「そんなコマかいこと言うてたら、イマの時代やっていけまへんで…」EDM世代の声が聞こえてきそうな、打ちこみビートがえんえんと。やがておなじみのメロディがチラッと聴こえてややホッと。ようやくポールの声が聴こえてやれやれ、でもそれはエフェクターで歪められていた…。
1986年の名盤「グレイスランド」を、ダンス・ミュージックのビッグ・スターたち10組(知っている名前はひとつもない)により全編大胆にリミックス。アルバム一枚のリミックスを若手に丸投げするという手法は、かって90年代にムーンライダーズ「dis-covered」(元は「月面賛歌」)などでも試みがあったけど、30年以上前の世界的名盤にたいする挑戦はおそらく初めてのこと。
当時はいろいろと物議を呼んだけど、アフリカン・ビートを大胆に導入したこの「グレイスランド」、リズムパターンに新鮮な味わいがあるせいか、やっぱりあれこれとイジってみたくなる作品ということなのだろう、小沢健二「ぼくらが旅に出る理由」を例にだすまでもなく。ダンス・ビートのはざまから、いかにもイマ風な音が響いてくるのはたしかに心地いい。
穏やかなラブソングだけ唄えば一生安泰なポール76歳だけど、常に失敗を恐れず新たなことにどん欲に挑んでいく、ミュージシャンとしての姿勢はホント素晴らしい。それにしても過去の名盤をそっくりリミックスするというこの手法、これからもどんどん拡散していくのだろうか。ひょっとしてパッケージ音源(=CD)最後の悪あがき?ちょっと複雑な気分にもなりました。
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