主人公は90歳になるアウシュヴィッツ収容所の生存者ゼヴ。大切な家族を殺(あや)めたナチスの残党が、いまもアメリカのどこかで生きていると聞いた彼は、認知症を患う身ながら復讐の旅に出る。手がかりは一通の手紙のみ。ゼヴを演じたのはクリストファー・プラマー、86歳(ウチの父親と同じ)が90歳を演じるという気の遠くなるロードムービー。
かって史上最高齢でオスカー助演男優賞に輝いた名優プラマーの、いかにもな“まだらボケ”ぶりには最大の賛辞を贈りたい。パブリックな場所では実にかくしゃくとした老人ぶりでありながら、いったん気持ちが弛緩すると、亡き妻が目の前にいると思って声かけしてしまう。思うように身体が動かないのにムリをしてしまうそのぎこちなさはリアルこのうえなし。
そしてロードムービーの面白さのひとつ、旅の途中で出会うひとびと、つまりアメリカの市井のひとたちの味わいも物語のスパイス、ただし今回ばかりはそこにサスペンス的な緊張感も加味されるのだけど。ラスト5分の衝撃ばかりが話題になっているけど、種明かしされたあとは結末一瞬の驚きだけでなく、物語全体の巧みなつくりに感銘した。
それにしても70年の月日を経た復讐など実際にありえるのだろうか、いや70年を過ぎたからこそありえた復讐なのかも…結末を知ってしまったからこそこういう持って回った表現をしてしまったけど、そこらへんは観てのお楽しみということで。原題は「Remember」とシンプルながら、実に的確かつ深い意味を持った言葉だなといましみじみ感じています。
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