香川照之が謎めいた隣人役を演じるサスペンス・スリラーと聞いた時点で、ああこれもまた彼の卓越した助演ぶりに依存した作品かと先入観を抱いてしまう。そして彼はこちらが設定した変人のハードルをやすやすと乗り越え、ただ単にサイキックな人物ではなく、常人と奇人がまだらに同居するやっかいな隣人像を実に軽々と演じ、やっぱりこのひとはスゴイということになる。
しかしヘンという点においては、この物語の主人公であり、観る側のほとんどが感情移入するだろう元刑事にして犯罪心理学者の高倉(西島秀俊)の行動やセリフも妙に芝居がかっていて、また別の意味でヘンだなあと思い、これは何かの伏線かと勘ぐったりもする。これって失礼ながら単に西島秀俊の演技が香川照之にくらべて拙かったということなのかもしれない。
そして竹内結子演じる高倉の妻康子が、物語のなかで取る行動の一部始終そしてそのさいの彼女の心理状態、とにかく最初から最後まですべてがまったく不可解。この人物のありように関してはちょっと製作側の説明を聞きたいところ。夫婦愛というのもこの物語の要素のひとつ、それなりのセリフもあるのだけど、不可解な妻の存在のせいでさっぱりこちらに響いてこない。
収穫といえば昨年「ソロモンの偽証」で鮮烈なデビューをはたした藤野涼子がここでも難しい役柄をこなしていることかなと。欧州の各映画祭では北野武・河瀬直美・是枝裕和とともに日本の優れた監督“4K”とならび称されている黒沢清監督、ここはエンターテインメント方面に思いきり針を振り切りすぎたなという結論でよろしいのではないでしょうか。
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