第二次世界大戦中、ナチスに略奪されたクリムトの名画は伯母・アデーレの肖像画なり、自分のもとに返してほしいと、アメリカに暮らす82歳の女性マリアが、駆け出し弁護士ランディとともにオーストリア政府を訴えた。過去と現在が行き交い、ウイーンそしてロサンゼルスと舞台はめぐる、90年代後半の実話をもとに作られたヒューマンドラマ。
全体の枠組みや登場人物のキャラ設定が非常にくっきりとしているうえに、ふたつの国と時代のあいだを実に絶妙のタイミングで行き交い、テンポよくぐいぐいと進んでいくストーリーにこちらは思わず引き込まれてしまう。とにかく万人受けするわかりやすさという意味において、上質の2時間ものテレビドラマを見ているような感触。中高生の団体鑑賞などにもふさわしい作品では。
でもこの物語をもっともはっきりくっきりさせているのは、マリアを演じたヘレン・ミレンの、常に背筋をピンと伸ばした気品あふれるたたずまい。歴史の波にほんろうされながら、さまざまな権力を向こうに回して戦うその凛としたすがたはまさにハマリ役。そしてもうひとりの主役ランディを演じたライアン・レイノルズはいままでの彼とはひと味ちがったキャラで新鮮そのもの。
そしてこのふたり、マリアとランディには共通する過去があるというところが話に大きな深みを与えていて…。権力と戦うふたりの情熱に満ちた連係プレーに酔いしれ、祖国を失った家族の悲しみに震え、ウイーンの美しい街並みに見とれているうち、話はやがてクライマックス、ラストシーンに待っていたのはドラマチックな演出…思わずお見事と唸らされました。
ログインしてコメントを確認・投稿する