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2015年08月12日11:15

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二葉あき子「祈り舟」、コロンビア正坊地会長の強い平和への祈願から実現した吉田正作品

 8月6日は広島に、9日は長崎に人類史上はじめて何の罪もない住民を対象にして核爆弾が投下されてから70年目だ。ことしも数多く鎮魂の催しが、現地広島長崎をはじめとして全国で繰り広げられている。
 広島と長崎のいいつくせぬ悲惨をテーマにした歌も無数にある。戦禍が止みほっとした人びとが手にした平和と圧政からの解放を、永久のものにしようと祈念して作られ歌われた。フランク永井も積極的に参加した「労音公演」。さまざまな平和の歌は「うたごえ運動・うたごえ喫茶」とかでもひろく歌われた。
 1949(S24)年から広島平和音楽祭が開かれた。これは20年続いた。多くの平和を願う著名人歌手のなかでフランク永井も名を連ねている。第1回で美空ひばりがうたった「一本のえんぴつ」は311を公演中に遭遇したクミコがその復興への思いを重ねてカバーで歌って以来、さまざまな歌手に復刻カバーされている。
 音楽祭実行委員長の古賀政男が多くの凝った作品を手がけた松山善三に作詞を依頼し佐藤勝が作曲してものだ。けっして流行するような歌になっているとは思えないものだが、長く歌い続けられた作品だ。ひばりは「いばらの道が続こうと、私は平和のために歌います」と決意をのべた。
 数かずの平和を祈願した歌のひとつに「祈り舟」というのがある。これは第12回広島平和音楽祭(1985[S60]年)に二葉あき子が歌った曲だ。作詞は美空ひばりに多くの歌詞を提供した石本美由紀である。そして作曲はフランク永井の恩師吉田正がしている。つまり、「フランチェスカの鐘」の二葉と石本はコロンビア、吉田はビクターで専属作詞作曲家の巨�發諒匹里△辰浸�代に、人気の作詞家と作曲家が作品を一緒に作れる時代ではなかったのだ。
 だが、当時のコロンビアの正坊地会長のなみなみならぬ熱い平和への思いから実現した。会長自身が広島出身。そして歌手に指名した二葉も広島出身。二葉は原爆投下のときに母と息子にあうために広島からの列車に乗った。混雑で十分遅れで出発しトンネルに入ったときに原爆がさく裂しくしくも命をつないだのだ。
 正坊地は、一方でビクターの吉田にただならぬ敬意をもっていた。吉田は従軍して語りつくせない思いを秘めている。しかし決してそれを口にしない。吉田が作曲家になってからその思いを表現したのは「寒い朝」(だけ)である。裏返しでは「いつでも夢を」である。戦後流行歌が多く作られていく中で、吉田は歌を庶民のささやかな喜び、幸せの広がり、つまり社会でいう「文化」の成熟があるところでの歌を追及していた。だから、ダイレクトに表現する望郷や労働の感情表現よりも、恋や別れや遊びという分野での表現を切り開いていった。都会的な大人のムード歌謡などというのはまさにその結果のひとつである。
 やや横道にそれた感があるが、コロンビアの会長はその吉田こそが平和を願う無数の人びとの気持ちを表現しくれるはずだというおもいがあったに違いない。そうした思いが通じて実現したのが「祈り舟」だ。ビクターも盟友コロンビアの会長の願いを正面から受け止めている。
 吉田は1975(S50)年にこの「広島平和音楽祭実行委員長」に就任している。
 この夏も、歌を歌い継ぐことで少しでも平和を実現するためにと、多くの催しが開かれている。「祈り舟」もそうした一曲である。広島、長崎の原爆は「平和」の名のもとに原発となって、人びとのすぐそばで存在している。半減期が万年単位のものをもてあそぶのは愚かなことである。ひとたびうごめけば末代までも計り知れない理不尽を負う。
 (いつも貴重なヒントをくださるJさん、ありがとうございます)

「祈り舟」第十二回広島平和音楽祭(昭和六十年八月)
  作詞 石本美由起/作曲 吉田 正/歌 二葉あき子

一、夏の川面に 岸辺から
  流す供養の 送り火よ
  いくら待っても 願っても
  あの日から 帰らんままの父母(ふぼ)がいる
  広島 ゆらゆら 太田川
  供養 灯籠 祈り舟

二、一つ二つと もつれ合い
  水を彩(いろ)どる 華(はな)になる
  若い面影 そのままに
  あの日から 帰らんままの友がいる
  広島 八月六日 夜
  涙 灯籠 祈り舟

三、眠る御霊(みたま)よ 安かれと
  祈り捧げる レクイエム
  今の平和も 知らないで
  あの日から 帰らんままの子らがいる
  広島 名を呼ぶ 風の声
  流し 灯指 折り舟
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