映画監督を目指す花子(松岡茉優)は、低予算のデビュー作品に着手するなか、そのピュアすぎる創作理念を先輩たちに叩かれ、半ば騙された格好で父・治(佐藤浩市)が待つ海辺の実家に戻ってくる。ところが彼女のそばには都会の片隅で出会った奇妙なキャラ、正夫(窪田正孝)という男がいた…。石井裕也監督のオリジナル脚本。
なるほどこれは故郷に帰還した花子が自身の家族をカメラに収め、ドキュメンタリー的な映像作品にてリベンジを果たす物語かと思いきや、その単純な発想はほとんど裏切られてしまった。中盤からは兄ふたり(池松壮亮・若葉竜也)が登場して一気に家族の物語へと急カーブ、序盤から漂っていたコメディタッチは加速度を増していく。
「茜色に焼かれる」で誰よりも早くコロナ禍の日常生活を描いた石井監督、今回も前半ではコロナがもたらした奇妙な日々を皮肉まじりに描いている。いやコロナ禍だけでなくいまの日本社会への皮肉あるいは映像業界の内輪受けもユーモアを交えながら随所に。それでいて最後は視点を家族の絆へときっちり着地させる見事な職人技。
最近の松岡茉優にやや感じる”女優業がんばってます”的な雰囲気が今回はいい方向に出た印象。そして他の出演者すべてに助演賞を捧げたくなる、笑いに満ちたセリフのやりとり。製作時期の前後関係はわからないものの、これがあの「月」と同じ監督の作品とは思えない…というより、監督業というのは実に大変だなと思った次第です。
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