いきなり個人的なことを書くけど、主人公・広岡(佐藤浩市)がひさびさに再会した旧友の佐瀬(片岡鶴太郎)と銭湯に浸かる早々のシーン、広岡の胸には縦一文字にくっきり手術跡。オヤと思ったところに「(心臓)バイパス(手術)だわ」とぶっきらぼうな彼のセリフ、まったく同じ経験と手術跡を持つ私はそこから一気にのめり込んでしまった。
ボクサーを引退したあと米国で事業に成功、40年ぶりに帰国した広岡の設定年齢はわからずも、佐藤浩市とはほぼ同い年の私の感情移入はぐんと高まった。案の定広岡の心臓疾患は物語を最後まで引っ張るファクターのひとつ、観る側に強くインプットすべく銭湯のシーンを冒頭に設定したのではとここばかりは自分勝手に解釈した。
監督は「64」「菊とギロチン」の瀬々敬久。沢木耕太郎2016年の朝日新聞連載小説が原作(未読)。邦洋問わず毎年のように新作と出会えるのがボクシング映画。そこにはいくつかのお決まりごとがあり、それらをひとつひとつ踏襲していくことの心地よさ、そして古今東西の名作との違いを見い出すことが他のジャンルにはない楽しさ。
冒頭の件でひいき目だと言われるのは覚悟の上で、中高年世代の一員となってからの佐藤浩市、今回の熱演がその代表作と言っていいのでは。鶴ちゃんも山口智子もトシを重ねて実にカッコいい存在感。タイトルが匂わせるように春から始まり春に終わる物語、いっさいダレることのない緊張感にあふれた日々が続きました。
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