42歳独身の陽子(菊地凛子)はほぼ引きこもり状態。仕事も買い物もオンライン、在宅のまま完結させる日々。父の死を知らせに突然やってきた従兄の茂(竹原ピストル)は、いまから葬儀のある弘前までクルマで連れて行ってやると言う。ところがその途上、あることから茂一家とはぐれてしまった陽子、孤独なみちのくの旅が始まった…。
途中出遭ったある人物からコミュ障害と断定されてしまう、陽子の人物設定に寄り添えるかどうか、そしてケータイ破損に所持金ほぼゼロという状況とはいえ、イマの時代ただひたすらヒッチハイクばかりくりかえして北上する陽子にリアリティがないと決めつけてしまうのか、まずは観る側に踏み絵を突きつけて物語は始動する。
ときおり父親(オダギリジョー)の幻影につきまとわれながら、陽子の凍りきった心はおりおりに揺れ動く。ただ、さまざまなひとと出会いのおかげで自分を見つめなおすことができ、新たな日々が始まる…といったイージーな着地を見せるロードームービーではなく、もちろん父の葬儀に間に合うかというスリルを味わう物語でもない。
これまでなんとなくつかみどころのなかった菊地凛子という女優、熊切和嘉監督とのひさびさの再会によってようやく代表作にめぐり逢ったかと。ほとんど静寂、あるいは風と波の音しか聞こえてなかった全体の印象、ただときおり鋭い旋律を響かせたジム・オルーク&小林英子(「ドライブ・マイ・カー」音楽担当)は今回も冴えてました。
ログインしてコメントを確認・投稿する