天才女性指揮者リディア・ター、輝かしい日々の先に待っていた苦悩とは…。監督トッド・フィールドひさびさのメガホン、16年前のその作品が米国市民社会にひそむ闇を描いたケイト・ウインスレット主演「リトル・チルドレン」と知ってがぜん興味。そして今回の主演は同じ美しきケイトでもケイト・ブランシェット。
意表を突いたオープニングロールのあと、しばらくはリディアの人物描写が続く。他者が付け入る隙のない完璧なる天才のふるまい。その辛辣な言葉は巧みな引用を織りまぜながらすべてが理路整然。冷ややかで緊張感あふれるスクリーンの彼女に引きつけられ、観る側は思わず背筋を伸ばしながら物語の展開をやや焦らされて待つ。
ようやくリディアの周辺にささいな動き。ここで初めてタクトを振る彼女が映し出され、なかなか上手い演出だなと思うがそれでも話はクレッシェンドといかない。そう、孤高の天才が堕ちていく様をゆっくりじっくり、つまり残酷な引き算を重ねながら、インパクトのあるクライマックスそして意外なラストシーンまでたどり着く。
あまりにもリディアが魅力的なせいか、周辺人物の描き分けがやや甘く、説明不足の部分があるかも。それはある意味余白が多く想像力を喚起する作品ということか。彼女の言葉を中心にクラシック音楽好きの知的中枢を刺激するフレーズがあちこちに。ひょっとしてそれらはあまりにベタすぎてツッコミどころ多々なのかもしれないけど。
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