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2023年04月07日16:00

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「ザ・ホエール」〜ほの暗い部屋が映す米社会

人生の終わりが近づいてきた肥満症の40代チャーリーは大学の非常勤講師。醜い自身の姿を見られたくないせいか、自室からのオンライン授業では常にカメラをシャットオフにしている。彼に残された数日間、その心によぎる思いとは…。主演はブレンダン・フレイザー、監督に「ブラック・スワン」のダーレン・アロノフスキー。

物語は月曜から金曜までをほぼ均等に区分、月曜にあたる導入部が実に巧い。わずか十数分の間に、貧困・社会保障・人種/性差別…現代の米社会が抱えるさまざまな問題を提示する。やがてチャーリー自身の絶望感ただよう日常を描写、さらにそれぞれが問題を抱えた看護師・実娘・宣教師が、彼をとりまく3すくみの構図を形成する。

第4の人物が登場、チャーリーと丁々発止のやりとりをするあたりでこの作品は舞台劇を原作にしていたなと気がつく。いやいや主人公が巨躯の持ち主そして動かないのだから、密室劇にならざる得ないわなあとも納得する。そしてその空間は常に部分照明だけに頼った、チャーリーの絶望感を体現したかのようにほの暗いままだ。

ずっと陰鬱な空気を抱えながら時間ばかりを重ね、はたしてこの物語は光明を見いだせないまま終わるかと徐々に不安がもたげ…。大学講師まで勤め上げる男がここまで自分を律せないのが米社会の病理なのか…チャーリーとその周辺人物を通して現代アメリカを俯瞰する、これもまたひとつの社会派作品ではと思った次第です。
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