mixiユーザー(id:2399973)

2023年01月28日17:00

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「イニシェリン島の精霊」〜リアルな伝承寓話

舞台は1923年、内戦が続くアイルランドの沖にひっそりと浮かぶイニシェリン島。荒涼とした大地連なるこの孤島では住民同士誰もが顔見知り。長年の友人コルムがこのところ急によそよそしくなり、途方に暮れるパードリック。同居する妹のシボーンや近隣住民を頼るも…。監督は「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナー。

長らく続いた関係の修復、この1点だけが物語のよりどころとなり、観る側は起承転結の起の部分だけにしばらく付き合わされることになる。何もない孤島に限られた登場人物、はたしてこれだけで最後まで話はモツのか、やや退屈を覚えたあたりでコルムはある思い切った行動、ようやくふたりの距離に多少の変化が生じてくる。

100年前だとあまり思えないのは、世俗からかけ離れた孤島の出来事だからかもしれないけど、パードリック(コリン・ファレル)の酒の力に頼る優柔不断な性格設定が、あきらかに現代社会にも散見する男性像に思えるからか。そして当時その環境下では唯一の教養の源、読書を楽しむ妹シボーンも、いかにも現代風の勝ち気な女性なのだ。

“あとからじわじわと味わいが湧いてくる映画作品”の典型。何もない孤立した場所での限られた人間関係と書いたけど、終盤に連なるいくつかの出来事を通して作品全体を眺めると、現代社会でも問題となっている人間同士のさまざまな諍いが、すべて展開していたなとしみじみした次第。各映画賞ノミネートも納得の傑作でした。
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