ニッキーと5歳の娘リトルは大都会ニューヨークの地下生活者。市内をくまなく走る地下鉄路線のさらに下層、闇につつまれたダンジョンでギリギリの生活を強いられている。ある日、不法住居者排除のため行政の職員がふたりに近づいてきたが…。ニッキーを演じるセリーヌ・ヘルドがローガン・ジョージとともに監督・脚本。
ハンディカムひとつで撮ったかのように、カメラはせいぜい半径数メートルを追うことに終始、被写体の表情を中心に据えた長回しや、動き回る対象を追いかけてブレることもたびたび。そしてその舞台はほとんど暗闇の世界。まれに地上に出ることがあっても夜のとばりの下だったり、灯りがあってもそれは蛍光灯の貧しい光だったり。
リトル目線で物語はスタートするも、終盤を迎えてそれはニッキーに移る。突然の出来事にただただ感情を爆発させている彼女、ただそこにはある葛藤も見え隠れするような。スリリングかつ衝撃の結末にはさまざまな見方が行き交うと思うけど、この邦題はあまりにもノーテンキではないかと、誰しも同じ思いにかられるはず。
原題は“Topside”。こちらもあまりにシンプル、かえって裏の意味があるのではと。地下生活者の実態と行政の処遇に関しては実際の取材に基づいたものということ、けっして“分断社会”の比喩にあらず。「フロリダ・プロジェクト」や「誰も知らない」「マザー」、過去の貧困母子ものの贅肉を極力削ぎ落とした感のあるタフな作品でした。
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