聴覚障害を持つ娘ビタとテヘラン市内で暮らすシングルマザーのミナ。夫ババクは殺人の罪で逮捕され、1年前死刑に処されてしまった。牛乳工場に勤めながら娘の成長だけを生きがいにつつましい日々をおくるミナ、ある日裁判所から呼び出しを受けると、あってはならない事実をいきなり知らされ、彼女の生活は急変する。
一部レビュー等では明かされているけれど、このとんでもない事実に先制パンチを食らい結末への興味がぐんと増してくる。そしてミナが何か行動するたびに、何気ないセリフひとつふくめてイラン社会の持つ独自性がことごとく顔を出し、そのたびに観る側は「ここは日本(あるいは欧米社会)であれば…」と比較に走ることになる。
ヒロイン・ミナを演じたマリヤム・モガッダムが共同監督・脚本も兼ね(ベタシュ・サナイハと2度目のタッグ)、映画作品にたいする検閲が厳しいイラン国家に挑戦するかのような、タブーといえる表現もあり(あ、これっていいんだっけかとノーテンキに思った)。案の定本国では上映回数が極端に減らされたという。
そして最後に待つ衝撃。そこにいたるまでじんわり持続するただならない緊張感、さらにタイトル(英題:Ballad of a White Cow)の持つ意味をかみしめながら、ミナのとった行動に誰しも思いをめぐらせるにちがいない。物語の設定だけをとらえると、死刑制度の是非を問う際の効果的なテキストになるかもしれません。
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