表向きは移動鶏卵販売業に勤しむ口のきけない青年テインとその相棒チャンボク、実際の主たる稼ぎは凶悪な犯罪組織から請け負う死体処理の仕事によるもの。ふたりは組織の命令により、身代金目的で誘拐した11歳の女の子チョヒを預かることになるが、チャンボクから彼女を押しつけられたテイン、奇妙な共同生活が始まった。
もちろんここはセリフいっさいなしの難役、テインを演じたユ・アイン(「バーニング 劇場版」のジョンス)が最大の注目点、ただ一見聡明な印象を抱かせ、自意識に目覚めながら無邪気(死体処理場でも平然と楽しげ〜終盤への伏線)でもある11歳チョヒ役のムン・スンア、彼女の存在なしにこの物語は成立しなかったに違いない。
このチラシから受けていたシリアスなイメージとは真逆、思ったよりコミカルに物語は進んでいく。やがてそのユーモラスな感触はじわじわと哀しみに転じていき、ラストシーンでは観る側の想像力をいやがうえでも刺激する。チラシに写る独特な大空の彩りは、月光美しい夜空もふくめいくつもの色模様が味わえる。
監督は80年代生まれのホン・ウィジョン。なかなか発想できない設定と展開、思わず上手いと唸ってしまう演出、オリジナル脚本を担当したのもこの若き女性監督。大傑作とするのはちょっと大げさながら、こういう巧みな物語を持つ小品が後方待機、月並みながらここは“韓国映画の底力”という表現を使わざるを得ない力作でした。
ログインしてコメントを確認・投稿する