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2021年05月21日17:30

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「茜色に焼かれる」〜コロナ禍、母と息子

石井裕也監督最新作。交通事故で夫(オダギリジョー)を失った母親良子(尾野真千子)とその息子中学生純平(和田庵)、理不尽な世の中を懸命に生き抜くふたり。コロナ禍における日常を描いたおそらく日本で最初の映画作品。なので道行くひとは誰もみなマスク、そこかしこにはアクリル板。石井監督のオリジナル脚本。

誰しも実際に起きたある事故を想起する冒頭のシーンに始まり、いまの日本が抱えるあらゆる問題、とりわけ弱者を生み出す社会的構造が次々と浮き彫りになる。ときおりスクリーンに現れるある数字は、物語をよりリアルな方向に導き効果的。さらにコロナ禍という設定が、観る側を実になまなましく重い状況に連れて行く。

本来なら全面的に感情移入すべき良子のキャラは、どうも一筋縄ではいかないまだら模様とでも言うか、恵まれない環境のなかで必死にもがくこの手の過去作品のヒロインとは一線を画しているように思う。もちろん尾野真千子はことしの主演女優賞本命ついに登場というべき大熱演、怒りと涙のアンサンブルが実に素晴らしい。

ただでさえ鬱屈したコロナ禍のなか、わざわざ重たい現実を受け止めたくないというひとには薦めにくい作品かなという気持ちと、これこそいま誰もが観て、たくましく生きる良子から何かを感じるべき令和の母子物語ではという、相反する気持ちが交差したまま、とにかくことしの邦画最大の問題作だと断言していいと思います。
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