著者はなんと現役の幕内格行司。それにしても恐るべき鉄チャンぶり、大所帯の日本相撲協会にはこういうキャラもいるわけだ。鉄道好きが高じた著者は、地方場所や巡業のさいに力士や親方が利用する相撲列車のアレンジなど、JRとのやりとりを中心に諸手続きを司る「移動係」、他のスポーツでいうところのマネージャー的な任務にも就いている。
ふだん相撲列車のようすを見た我々は、単なる団体貸切列車に力士たちがめいめい好き勝手に乗っているだけのように思っている。ところがこの書で多くのページを割かれた、きっぷの手配を始めとするさまざまな手続きを知ると、一般乗客への配慮や力士たちの移動時のふるまいもふくめ、移動係には実に細かい気くばりが必要とされているとわかる。
出版社の性格上、大相撲に関する事柄には初心者向けの表現、たいして鉄道に関する事柄には専門的な表現が施してあるような。つまり”幕下以下はひと場所に7番しか取らない”といういまさらな説明があるかと思えば、逆に”団臨”(団体臨時列車のこと)という略語はそのまま。まあこちらとしては逆のほうがありがたいんだけど。
そして第三章の大相撲X鉄道雑学、つまり特急「かいおう」や運転士に転じた元力士、福岡にある「大行司駅」の話など、ちょっとした小ネタをもっと多く知りたい気持ちもあったけど、やっぱりこの新書読者の中心である鉄道マニアにとっては、JRを相手に専門的知識を駆使して奮闘する著者のすがたに軍配を上げたいというところなのでしょう。
ログインしてコメントを確認・投稿する