ことしいっぱいで70年近くの歴史に幕とか。はす向かいが551蓬莱本店、なんばの超一等地にある老舗の服地屋。お店の前を通るたびに、いつまでもがんばるなあという思いと、もっと他におカネが動く商売あるんちゃうのという気持、そして小学生のときたった一度だけ母親と一緒に探しものをしたことなどを思い出していた。
当時ビルマ(現ミャンマー)に駐在していた父親から、こういう生地を探してくれとサンプル貼付の手紙。政界か財界か忘れたけど、現地VIPの奥様から依頼があったと。おそらくワンピースにでも仕立てるのだろうピンクのレース地(フォトは類似のもの)、似よりの色柄はビルマでも手に入るけど、優秀な日本の生地にこだわりたいと。
「ここになかったらもう諦めるわ」おそらくすでにいくつかお店を回ったのだろう、そう言いながら母親は私を連れてこのお店にお邪魔した。結局ズバリのものは最後まで見つからず残念。「いっときよう(一時はよく)出ましたけどね、この手。いまもうハヤりませんわ」お店のひとの言葉はいまでも妙に覚えている。
この素材感、いま見ればいかにも昭和の時代の流行という印象。仕立て上がったワンピースに身を包んだ、アジアン・セレブのすがたも目に浮かぶ。たぶんそのときの私は、反物がうず高く積まれた、あの狭くるしい店内をウロチョロしていただけだろう。やがて輸入生地に関わる仕事に就くなんてことはこれっぽっちも知ることなく。
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