ポルトガルの美しい町シントラに、家族や友人たちを招き寄せたベテラン女優フランキー。本来楽しい時間であるべき避暑地でのバカンス、にもかかわらず彼女の心は吹っ切れることがなく、去りゆく夏の日々と自身の人生を重ね合わせて寂寞の思いにとらわれる日々。主演はイザベル・ユペール、監督はアメリカ人アイラ・サックス。
いや、吹っ切れないのはけっしてフランキーだけではなく、この小さな町にやってきた家族や友人たち誰もが人生に悩みや葛藤を抱えていた。ただそれを感情的に吐露するものはごくわずか、ほとんどが自分を抑えつつ周囲との距離を図っている。したがってセリフはごくシンプルなものに収まり、観る側の想像力はいつになく喚起される。
彼らはフランス人でありアメリカ人でありイギリス人であり、そして現地ポルトガル人ももちろんそこに。ブレンダン・グリーン、マリサ・トメイ、ジェレミー・レニエ…共演陣もほぼそれらの国に即した個性的なキャスティング。基本的には英語とフランス語が重なる会話、各人の訛りや言い回しの妙まで楽しめたら言うことなしだけど。
物語に大きな起伏あるわけでもなく、いかにも欧州映画的な、ただ淡々とすぎていく晩夏の日々。去りゆく夏のあのなんともいえない寂しさをしみじみと味わえる静かな作品、もともとは春先に公開が予定されるも、コロナ禍の影響で延期の憂き目に。今回まさに邦題にふさわしいタイミング、災い転じて福となったお披露目でした。
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