初っ切り力士は出世しないといわれる。稽古をほったらかして余興にうつつを抜かしているからか。あるいは出世をあきらめたから余技に精を出すという見方も。昭和の名横綱・栃錦と平成の名解説者・出羽錦が、若いころは初っ切りの名コンビだったという伝説は耳にするけど、それ以外に初っ切り力士が出世したという話は聞いたことがない。
新型コロナ感染による三段目力士・勝武士の死亡、角界初ということやプロスポーツ選手初ということよりも、国内初の20代以下の犠牲者ということがもっともショックだった。寡聞にしてその該当者はすでにいると思っていたし、それはもともと病弱なひとに降りかかった不幸だと思っていたから。それがまさか現役力士だとは…。
28歳はコロナ犠牲者としては最年少かもしれないけど、三段目力士としてはかなりのベテランだ。炎鵬より5センチ背が低く、10キロほど重いだけの彼。身体さえ大きくなれば強くなれるとばかり、しこたま食べるだけ食べる日々が続いていたのだろう。万年三段目という地位を考えると、質よりも量ばかりを優先した食生活だったような。
インシュリンとつきあいながら初っ切りに興じ、後輩力士に追い抜かれていく日々。彼は本当に相撲が好きだったんやなと思う。これでまた食事情をはじめ力士の生活様式に世間のメスが入るかもしれないけど、これまで喉元過ぎれば熱さを忘れ続けてきた相撲協会、今回はどう対処するのか。とにかくここは彼のご冥福をお祈りしたいと思います。
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