昨年「文藝春秋」6月号に掲載され大きな話題となった最新エッセイ。著者が初めて自らのルーツを明らかにし、いままで綴ることのなかった亡き父親の記憶をたどっていく。タイトル通り、かって村上家が飼っていた猫が登場、父親の人生にたいして彼の存在とは〜主従・対極・伏線・比喩…そのあたりのスタンスは読む側の想像力次第。
表紙をはじめとして、ふんだんに登場するさし絵をを描いたのは高妍(Gao Yan・ガオ イェン)という、なんとまだ24歳の台湾・台北市生まれの女性イラストレーター。おもに阪神間在住時つまり少年時代の著者がモデルと思われる(もちろん猫も多数登場)、全編セピア色で統一された柔らかいタッチは、懐かしさあふれるものばかり。
新書判に大きめの活字でわずか100ページたらず、くわえてふんだんなさし絵。立ち読みでもあっさり読破可能な分量にも関わらず、活字から目を離していろいろと思いを巡らせることしばし、読了までに思いのほか時間がかかってしまったのは、やっぱり描かれていた父子関係に、自分と自分の父親のそれを重ねてしまったから。
世界的な文学者である著者と自分を重ねるとは、ドあつましいにもほどがあると思うけど、この25000字あまりのノンフィクションにおいて、著者とその父親がある節目をむかえたときの年齢関係が60歳手前と90歳をすぎたあたり、私と父親がいままさにそのときを迎えているからこそ、いろいろと思いが駆け巡ってしまったのです。
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