この7月に88歳で他界したボサノヴァの神様、ジョアン・ジルベルトをめぐるドキュメンタリー。彼を追うのはフランス人監督ジョルジュ・ガショ。スイス=ドイツ=フランス作品、独・ポルトガル・仏・英の各言語が飛びかう。もちろん制作および海外公開は他界前のこと、ジョアンが天に召されたあとだったらこの作品は成立しなかったのでは、というところがミソ。
ドイツ人ライターのマーク・フィッシャーは、10年以上人前からすがたをくらましているジョアンを追ってはるばるブラジルまで出向き、その道中記を一冊の本にする。ところがマークは出版1週間前に自ら命を絶ってしまうのだ。ジョアンが紡ぐ言葉に感銘したガショ監督は、マークが実現できなかったジョアンとの邂逅を果たすためジョアンゆかりの人や土地を訪ねる。
つまり“ジョアンを追うマークを追うガショ監督”という二重構造になっているところが、関係者のインタビューと主人公の映像だけで構成した一般的な音楽家ドキュメンタリー作品との大きな違い。その分“応用編”的な要素も多分にあって、やはりジョアンの音楽や人となりをよく知ってほうが、語りに混じるちょっとした小ネタなどを深く味わえたような気がする。
たぶんガショ監督は、撮影を続けるうちジョアンよりもむしろ彼への狂信的な思いあふれるマークという人間のほうに興味が出てきたのではないかという見方もありかなと。ブラジルの著名なミュージシャンが何人か登場、街並みや自然の美しい部分も雑然としたところも、そして愛らしく憎めない市井の人々も、等身大のブラジルが見事に映し出されていました。
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