ヴィム・ヴェンダーズ監督最新作。生物数学者ダニー(アリシア・ヴィキャンデル〜「リリーのすべて」のエディ・レッドメイン妻役)は、ノルマンディー浜辺のホテルで、国策による灌水工事の技師(を装ったMI-6諜報部員)のジェームズ(ジェームズ・マカヴォイ)と出会う。わずか数日のあいだにふたりは情熱的な恋に落ちるものの、やがてその間は引き裂かれ…。
美男美女によって演じられるこの設定はいかにカッコよく、物語全体からすればあくまでも前提部分にすぎないけど、ふたりが距離を縮めていく過程に交わされる、アカデミックなセリフのやりとりは、もうこのままベタな恋愛もので終始してもエエやんと思ってしまうくらい魅力的。もっともそのなかにその後の伏線となる言葉がいくつかちりばめられてはいるのだけど。
現実はそんなにうまくいかず、ソマリアへ向かったジェームズはジハードの戦士に拘束監禁され、ふたりは離ればなれになってしまう。そう、物語はここからが本題、「水」を共通項として(原題「Submergence」は冠水・水没・沈水といった意味)、数日間の情熱に思いをはせながら、遠く離れた相手を想う、お互いの気持ちの揺れを観る側は追っていくことになる。
ヴェンダーズ監督のことだけに一筋縄で行くわけがないとわかりつつも、とりあえずは3通りの結末を考えてみたけれど、案の定そのどれにも当てはまらなかった。テロ組織と深海探査、それぞれ“潜りこんで行く“ことの意味合いにイメージがふくらむ作品。せっかくならこの魅力的な男女設定だけ借りての娯楽作品も観てみたいなと、ちょっぴり思ったりもしたけれど。
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