雑誌「文學界」8月号掲載の新作短編2作。ふだんは文芸雑誌などスルーしているけど、両編そろって魅惑的なタイトルを放っていたので思わず立ち読み、というか最近の大型書店はたいがい快適な空間を用意してくれるので前者34ページ、後者17ページをササッと座り読み。連作短編「一人称単数」の4作目と5作目らしく、当然ながら主人公は"僕”。
◎ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles
若き日をともに過ごしたガールフレンドそしてその兄とのふれあい。著者自身の回想かと思わせるも、物語の基幹を成す部分はあきらかに創作。著者とビートルズの関わりをここまで具体的に綴った文章はおそらく初めてでは。こちらの想像力が貧しかっただけかもしれないけど、思っていた結末とはいかず。ツカミにまんまと引っかかったかな。
◎ヤクルト・スワローズ詩集
70年代の初めに上京した著者は、神宮球場の外野芝生スタンドに寝そべり、スワローズをテーマにした詩作にはげむ日々だった。世界的な文学者といち阪神ファンの小学生を同じフィールドにならべるのは失礼千万ながら、今回初めて公開されるいくつかのみずみずしい散文は、先日話題になった"春の大山”を思い出してしまった。
当時のスワローズあるいは神宮球場と対をなす存在として、タイガースそして甲子園球場が登場する。幼きころ、父親に連れられて体験した人気球団超満員のスタンド。先日父親との確執を初めて公にした著者、それをふまえての今回の回想なのかも。それにしても彼によって綴られる多くの実在する(した)プロ野球選手たち、妙にワクワクしてくるから不思議なものだ。
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