もし昨年の秋に何も起きていなければ、謹んでお受けしている貴景勝の両側では、現・花田光司氏と現・河野景子さんがそろって頭を下げているはず。千賀ノ浦親方には本当に失礼な話だけど、誰もがちょっぴり残念な気持ちでいるに違いない。それにしても預けられた高校生逸材をここまで育てあげた花田氏はいまこの光景を見てどんなふうに思っているのだろう。
平成の角界を制覇した、ハングリー精神あふれる外国出身力士にたいする日本からの回答が、芦屋の裕福な家庭でスパルタ式に鍛えられた存在だったとは(貴景勝の父親は”カネを持ってる星一徹“だ)。風雪厳しい北の国から、けっして裕福ではない大家族で育った大男がやってきたのは遠い昭和の時代の話。この金持ち/スパルタは新しい時代のトレンドになるんだろうか。
それでいて貴景勝本人はいかにもお相撲さんらしい丸々としたたたずまい。伝達式の口上では“武士道精神”という古き言葉を発して日本人の気持ちをくすぐったりも。そしてその相撲っぷりは突き押しに徹してけっして四つにならないもの、その取り口で大関の地位まで登りつめた力士は過去何人かいたけど、横綱の地位を手にした力士は知るかぎりひとりもいない。
はたして彼はいまの“一刀流”の相撲をいつまでも貫き通して横綱の地位につくことができるのだろうか。この春場所の負け相撲いくつかが示すように、叩かれたら弱いという点を克服しないといけないし、15日間突き押しというのは相当な体力が要求される。どちらにしても新しい時代にふさわしい22歳、気持ちの強い彼ならきっとやってくれそうな気がするけれど。
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