監督・主演クリント・イーストウッド。90歳になろうかという老人アールは、事業に失敗し家族からも見放された孤独の身。クルマの運転さえできればと持ちかけられた仕事は、なんとメキシコ犯罪組織が仕切るドラッグの運び屋だった。国境に沿ったフリーウェイをくりかえし走り抜ける日々。やがては麻薬取締局捜査官に追われることになり…。これもまた実話なり。
ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン、アンディ・ガルシアといった豪華な顔ぶれが脇を固め、実娘のアリソン・イーストウッドまでもが出演。ただこの物語を実に生々しくそして味わい深いものにしているのは、麻薬犯罪カルテルにからむチンピラを、ほのかなユーモアをまじえながら演じている何名かの(おそらくメキシコ系の)役者たちだろうと思う。
とにもかくにもイーストウッド印。思わずニクいと感じさせるカメラワーク、人生訓一歩手前の滋味にあふれたいくつかのセリフ、これほど“映画のツボを心得た”というフレーズが似合う表現者は他にいないのでは。第二次大戦に従事した老人の目を通して国境のざらついた風土を洗い出し、トランプ政権が試みた愚行を俎上にのせるという社会派作品的側面もある。
控えめながら暴力を織りまぜ、老人を主人公にした一種のロードムービー。北野武がこれから撮りたいのはこんな作品ではないかと思った。それは国境のチンピラたちのたたずまいがどこかたけし軍団と二重写しになったから。どちらにしてもどうせ来年のキネ旬外国映画1位はこの作品やろと嫌味のひとつも言いたくなるような、スクリーンの隅々まで気配りのきいた傑作でした。
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