来週初め発表になるアカデミー賞3部門にノミネート、1970年代のニューヨーク・ハーレムが舞台。でっち上げられた罪状で逮捕され投獄中の婚約者、そして彼の無実を晴らそうと妊娠中にもかかわらず奔走する女性とその家族の物語。新人女優キキ・レインと「グローリー」のステファン・ジェームズが恋人たち。監督は「ムーンライト」のバリー・ジェンキンス。
恋人たちを優しくつつむように、カメラは終始右へ左へゆっくりと動き、ときおり効果的にはさまれるスローモーション、そして画面が活気を帯びてもそこで流れるBGMはスローなものばかり、前作「ムーンライト」でもその兆しがあった“静かな美意識の三重奏”みたいなものが全編を貫き、物語全体が回想モードでつつまれ格調高い雰囲気にあふれている。
ふたりの70年代ファッションにも注目。まるでこの物語は我々の着こなしに目に止めてくださいよと言いたいかのように、冒頭のふたりはアウターとインナーのヴィヴィッドな色合いを見事に反転させた装い(まあひとひねりしたペアルックですね)で登場。その後も派手すぎず地味すぎず、シリアスな物語とはまた別の見どころをこちらに提示しているようだった。
ハーレムにおける家族や友人との絆と社会(白人社会の権力)とのパワーバランスみたいな部分にも注目、真綿で首を締めるという表現が正しいのかどうかわからないけど、現在まで続く人種差別の問題を、これまでのその手の作品のように声高に叫んで訴えるのではなく、希望とプライドをけっして捨てることなく静かな美意識に変換して主張した傑作だと思います。
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