ことしの1月1日がちょうど生誕100年目、ということでこのところサリンジャーもの多し。20世紀のアメリカ文学を代表する天才の半生。作家を志す大学生だった1930年代終盤のニューヨークから、そのトラウマにしばらく苦しむことになる戦地での地獄の体験をはさんで、やがて初長編がベストセラー、一躍時代の寵児となった戦後の日々までを描く。
サリンジャー役にはニコラス・ホルト。マッドマックス最新作出演より、かっての「アバウト・ア・ボーイ」子役と言ったほうがいいか。表情にサッカーの長谷部ちょっと入り。伝説の作家が持つ繊細な部分と頑固な部分のバランスをうまく表現していた。脇で光るのがウイットに富んだセリフ連発の大学教授役ケヴィン・スペイシー(個人的スキャンダル発覚は撮影後のようで)。
時代の流れにあわせて変化していく米東海岸文化数々のディテール、言葉づかいや音楽も興味深いけど、とりわけそのファッション、戦前のニューヨーク社交界を中心としたフォーマルな装いと、隠遁生活に入った彼のアメリカン・カジュアル(もちろんイマのそれとくらべるとずっとおとなしく上品だけど)な装いとの対比の妙が面白かった。
ほぼ時系列に従い、多少凝った表現があるものの全体的にはヒネリのない真っ当な作り。熱心なサリンジャー好きからすれば、けっこういまさらなことばかりでちょっと物足らなさを覚えるのでは。そういう意味では昨年秋に封切られた「ライ麦畑で出会ったら」は応用編、そしてこちらは基礎編という位置づけ、サリンジャー入門にはまずこちらをつかまえてというところですね。
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