ポールの新譜といってもサイモンのほう。今回はセルフ・カバー・アルバム。ただ誰もが知る有名曲はいっさいなく、おそらくポールの極私的なお気に入りいくつかを、新たな解釈をほどこしてもう一度世に問いてみたいというリベンジ的気持ちから生まれた企画かも。まことにイージーな表現ながら、全体的にジャジーそしてクラシカルなアレンジが主流。
10曲中なんと4曲が2000年の「ユー・アー・ザ・ワン」から。グラミーにもノミネートされた彼としては起死回生の一発、それでも満足いかない部分があったということだろうか。たしかに日本ではあまり話題にならなかった作品だけど…。あとは「ひとりごと」「時の流れに」「ワン・トリック・ポニー」「リズム・オブ・ザ・セインツ」「ソー・ビューティフル・ソー・ホワット」から1曲ずつ。
そして私にとってもっともなじみのある曲だったのが1983年「ハーツ・アンド・ボーンズ」からの「犬を連れたルネとジョルジェット」。この曲をニューヨークの室内セクステットyMusic(クラリネット奏者は日本人青森英明)のみをバックにしてポールは実にていねいに歌っており、このしみじみとしたアレンジはこれからの季節、秋の夜長にピッタリだと思ったのでした。
いやいや、ウィントン・マルサリス、ビル・フリゼール、ジャック・ディジョネット、スティーヴ・ガッド等のプレイが楽しめるこのアルバム全体が、実に味わい深くこれからの季節にふさわしい。現在“ライブ活動引退ツアー”真っ最中のポールだけど、最初からライブ引退なんて信じていない。むしろもうひとりのポールのようにガンガン日本にも来てほしいと願っている次第です。
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