1973年、テニスの世界女王ビリー・ジーン・キング(当時29歳、我々にはキング夫人という呼称でおなじみ)は男子元チャンピオンのボビー・リッグス55歳と全米注目のなか対決する。年齢差にてハンデ修正した男女マッチ、言わば大坂なおみが松岡修造とガチで対戦するようなものながら、そこには男性優位社会を覆そうとするビリーの熱い思いが込められていた。
ビリー役には「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーン。あのキラキラしたヒロイン、そしてこれまで小悪魔的な女性ばかりを演じてきた彼女がこれほど生々しい存在に挑戦するとは、これは今後も目が離せない。一方おチャラケボビー役にはもってこいのスティーブ・カレル、「30年後の同窓会」の落ち着いた彼ではなく、これこそが本来のすがたといったところ。
70年代前半におけるアメリカの空気がこれほどストレートに伝わってくる作品も少ないと思う。時代考証はもちろんのこと、女優・男優すべての登場人物のヘアスタイルやメイク、ファッションだけでなく、ちょっとした仕草や表情からも当時の雰囲気が醸し出され、本当に彼らは現代の俳優なのかと不思議に感じてしまうぐらい。このきめ細かさには拍手を送りたい。
もうちょっとふたりが対等に描かれていると思っていたが、ボビーはあくまでも添え物、それでもこの実話に「キング夫人物語」的邦題をつけなかったところに大きな意味あり。ビリーは男性優位社会のみならずもうひとつの偏見とも戦っていて、それはラストシーンにおけるある脇役の言葉に象徴され、そのときこの原題が持つ意味がくっきりと浮き彫りにされたのだった。
ログインしてコメントを確認・投稿する