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2018年04月07日15:45

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「ラッキー」〜テックス・メックス枯山水

昨年91歳でこの世を去った名脇役ハリー・ディーン・スタントン最後の主演作。アメリカ南西部の小さな街でひとり暮らす現実主義で気難しい偏屈男ラッキー90歳、そのなにげない人生晩年の日々を淡々と静かに描いていく。彼をとりまく街のひとびともみな個性的で愛らしく、そのなかのひとりとしてデヴィッド・リンチが友情出演。

ほんとうに何も起こらない。ラッキーの口からは波乱の引き金となりそうな悪辣な言葉がいくつも飛びだし、観る側はさあここから何かが起きるぞと一瞬身構えるも、その覚悟はあっさりと裏切られ次の場面に移ってしまう。後半部分になってようやく華やいだ光が彼に当たるシーンがあるのだけど、そのあとの彼とその周辺に何らかの変化がおきるということもない。

セリフのなかに登場するいくつかの小さなエピソードは、ハリーの人生で実際に起きた出来事だというし、荒涼とした大地を黙々と歩くそのすがたは代表作「パリ、テキサス」を意識した演出。人生の最期が近づいていることを察した彼自身が、その集大成をこれが初監督作品となるジョン・キャロル・リンチ(「ファウンダー」のマクドナルド兄)に託して遺そうとしたことはあきらかだ。

映画好きにはこれぞ見当違いと言われそうだけど、この何も起きない恬淡とした雰囲気は、もし小津安次郎が長く生きていたら、どこかの山村を舞台、笠智衆を主役に起用してこういう作品を撮っていたのではないかと思ったりもした。劇中そしてエンドロールで流れるいくつかのカントリータッチの曲、まさにラッキーの生きかたのような味わいのある歌詞にも注目です。
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