英国の歴史に名を残す名宰相のライフタイムを追った物語かと思っていたら、1940年5月の首相就任からダンケルクの戦いまで、27日間における彼の心の葛藤を描いた作品だった。おそらくこの27日間というのは、日本人にとっての昭和20年8月と同じくらいの重さをもつ歴史的転換の濃密な時間として、ある世代以上のすべての英国人に刷りこみのある期間なのだろう。
全編チャーチル(ゲイリー・オールドマン)のひとり舞台。いちおう秘書のエリザベスと妻のクレメンティーンという、陰ながら彼を見つめる女性の存在、つまり異なった視点が用意されているけれど、強力なリーダーの前にはいささか弱すぎた感じ。とにかく圧倒的な存在感、周りの政治家たちを一瞬で黙らせるべくたたみかける、いくつかの特有の言い回しが面白かった。
エンドロールで大きく“KAZUHIRO TSUJI”、日本人がオスカーを手にしたこともあって、ゲイリー・オールドマンの特殊メイクばかりが話題先行している感があり。まあ実際のところ、どこまでチャーチルに似ているかということはあまりわからなかったけど、ゲイリー・オールドマンが演じていることをいつのまにか忘れてしまっていたことだけはたしか。
このシーンは事実なのかどうか、チャーチルがひとりロンドンの地下鉄に乗りこみ、市民たちと対話をするというくだりは、リアルに再現したといわれる英国議会の場面なんかよりずっと印象的。原題は「Darkest Hour」、時代の空気や終始淡い光線がさす暗めなスクリーンの雰囲気、この物語のいろいろな要素を合わせのんだ実にいいタイトルだと思いました。
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